予防歯科治療・ドライマウス
口腔乾燥症(ドライマウス)に対する対症療法として用いられる口腔保湿剤は要介護高齢者への口腔ケアや訪問歯科診療などで日常的に使用されています。口腔乾燥症(ドライマウス)は唾液分泌量の低下やシェーグレン症候群などによって生じ、乾燥感、ねばつき、ピリピリ感、飲み込みにくいなどの症状をともないます。
口腔保湿剤はたくさんの商品が市販されおり、それには特徴があり、お口の中の状態により使用するものは変わります。適切な口腔保湿剤の選び方と使い方を知ることが大切です。
保湿剤の性状
★スプレータイプ
指でプッシュしお口の中に噴霧し、舌でお口の中全体にまんべんなくいきわたらせるものです。噴霧するだけなので簡単に使用できます。液体状のため蒸発しやすく保湿効果の持続時間が短くなります。
★ジェルタイプ
チューブ状の容器に入っていて、指に取りお口の中に広げます。スポンジブラシを使用しても大丈夫です。ジェル状のため保湿効果の持続時間が長いです。粘性が高いため、粘つく場合があるので乾燥したお口の粘膜に直接塗布するのではなく、水でうがいや、スプレータイプや洗口液タイプの口腔保湿剤で湿らせてから使用します。
★洗口液タイプ
ボトル状になっています。通常の洗口液にはアルコールを含むものが多いですが口腔保湿剤にはアルコール成分は含まれていません。液体状のため保湿効果の持続時間が短くなるので、ジェルタイプと併用すると保湿される時間が長くなります。
口腔保湿剤の選び方
・口がねばつく→ジェルタイプの口腔保湿剤を使用すると、ねばつきが強くなると感じる方もいます。その場合は粘性が低い口腔保湿剤を選ぶ方が良い時もあります。
・夜に乾燥感が強い→保湿の持続時間が長いジェルタイプがおすすめです。
・舌がピリピリしたりしみる→なるべく刺激が少ないものを選択しましょう。
・嚥下障害のある方→嚥下障害のある場合、粘性が低い口腔保湿剤は咽頭部に流れ込みやすくなるので気をつけましょう。ジェルタイプを使用し、量が多すぎると咽頭に貯留しやすく誤嚥の危険があるため、量にも注意が必要です。スプレータイプを使用する場合、舌にスプレーをかけるようにします。
・味→商品により味は異なります。爽快感があるものや、甘みがあるものなど好みの味を見つけ使いやすいものを選びましょう。
口腔保湿剤を使用する時に注意すること
口腔保湿剤が誤った方法で使用されていることがあります。ここからは要介護者に向けての説明になります。
・口腔保湿剤の使いすぎ→誤嚥のリスク、ねばつき感が増す
上記にも書いたように、ジェルタイプの口腔保湿剤を多量に塗布すると咽頭部に貯留しやすく、流れ込んで誤嚥してしまう可能性があります。粘膜上に薄く一層塗り広げるようにしましょう。
・口腔保湿剤の重ね塗り→新たな感染源になる
口腔ケアを行う際、重ね塗りをしてしまうと口腔粘膜の上に剥離上皮ができ、その上を最初に塗られた口腔保湿剤が覆い、その表面に痰などがついているところに口腔保湿剤を塗ることでその痰などの付着物を閉じ込めてしまいます。これが新たな感染源につながる可能性があります。古い口腔保湿剤はスポンジブラシなどで必ず除去した後に、新しい口腔保湿剤を塗布するようにしましょう。
・乾燥した口腔粘膜にジェルタイプの口腔保湿剤を塗布→乾燥感が増す
乾燥しているから保湿剤を使用するというのではなく、お口の中の症状に合わせ口腔保湿剤を選ばなければいけません。乾燥感が強い場合にジェルタイプを使用すると、乾燥感がより強くなるケースもあります。水などで湿潤させた後、潤いを閉じ込めるイメージでジェルタイプを塗布するようにしましょう。
・保湿だけに使用されるものではない→痂皮の除去にも使える
唾液分泌量低下や口呼吸により乾燥感が強い方の口腔ケアをする際に、口腔保湿剤で粘膜をうるおすと痂皮がやわらかくなるので除去しやすくなります。スポンジブラシを洗口液に軽く含ませ拭うこともできます。痂皮を除去しきれいにした後は、再度新しい口腔保湿剤を塗布するとよいでしょう。
口腔保湿剤には「スプレー」「ジェル」「洗口液」の3つの性状があり、配合成分や味、特徴も製品により異なります。お口の症状にあったものを選び、適切に使用しましょう。
(歯科衛生士 9 2018 vol.42 参考)