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口の健康は、全身の健康と深く関わっています。健康な口腔であれば、よく噛むことができ、おいしく、楽しく食べることができ、より良く、生きることができるのです

フレイル対策

フレイルとは高齢者がしだいに弱り、要介護に至る手前の状態のことをいいます。身体的要素精神的要素社会的要素の3つがフレイルの構成要素です。動作が遅くなったり、転倒したりしやすくなる身体的要素には”何を食べるか”が、大きく関係しています。運動量が減り、食欲が落ち、そして筋肉が落ちると足腰が弱り、歩きづらくなったり寝たきりに陥ってしまうことがあります。これにはサルコペニア(筋肉減少症)が大きく関係しています。サルコペニアの予防にはタンパク質が必要です。タンパク質や摂取し、適度な運動をし、筋肉をつけることは効果的なフレイル対策となります。

また、フレイルの症状は口にも現れます。これをオーラルフレイルと呼びます。滑舌低下、食べこぼし、わずかなむせ、噛めない食品が増えるなどの些細な口の機能の低下から始まり栄養失調を招きます。早めに気付き適切な対応をすることで、よりフレイルの下り坂を引き返すことができます。些細な症状を見逃さずに気づくことが大事です。オーラルフレイルの対策にはバランスの良い食事(タンパク質をしっかり摂る)、口を使う(噛む、話す、歌う、笑う)、筋肉を鍛える、歯と口の定期的な管理(歯医者でのメインテナンス)、適度な全身運動などがあります。

歯周病と全身疾患

今では100以上の全身疾患が歯周病と関係していると言われています。その中で、比較的科学的根拠が高いものは認知症、がん、誤嚥性肺炎、早期低体重児出産、関節性リウマチ、虚血性心疾患、心内膜炎、心筋梗塞、糖尿病、動脈硬化症などがあります。

歯周病と全身疾患をつないでいるのは炎症と菌血症です。炎症は有害な外部からの刺激に対する生体の防衛反応で、炎症が起きると、発赤、発熱、主張、疼痛、機能障害を特徴とする徴候が生じます。

慢性的な炎症

炎症には原因があります。通常その原因が消失すれば、炎症は軽快に向かいます。例えば抜歯後の腫れや、風邪などの場合、数日から1週間程度で発熱や腫れなどの症状は治まります。これは急性炎症と呼ばれます。しかし歯周病による炎症は、適切な歯周治療が行われない限り刺激は続くため、長期間炎症は続くことになり、慢性的な炎症となります。歯周病によって産生された炎症メディエーター(炎症を全身に拡大させる物質)は、血流に乗って歯周組織から全身に運ばれ、色々な組織や臓器の炎症に亢進させ全身疾患を発症、悪化させてしまいます

非感染性疾患(NCDs)

「不健康な食事や運動不足、喫煙、過度の飲酒などが原因で、生活習慣の改善により予防が可能な疾患」は、1997年頃から生活習慣病と呼ばれていました。しかし最近WHO(世界保健機関)が心臓血管病、がん、慢性呼吸器疾患、糖尿病などを非感染性疾(Non-7Communicable Diseases:NCDs)と定義しました。NCDsは日本人の死因の6割以上を占めています。NCDsは地球レベルでの課題です。むし歯や歯周病などに代表される口の病気は世界で 39 億人が罹患しています。多くの研究から、口の病気は からだの病気と密接な関係があり、とりわけ生活習慣が多大な影響を及ぼしていることが報告されています。また、歯周病ともっとも密接に関連している全身疾患はNCDsであり、NCDsと歯周病は炎症でつながっています。歯周病が良くなればNCDsも改善し、NCDsが良くなれば歯周病が改善することが明らかになってきています。

健口だから得られることがあります。口の機能を維持、向上させることが大切です。