予防歯科治療・ドライマウス
根面う蝕とは、歯の根の表面にできるむし歯のことで、成人や、特に高齢者に多く見られます。
歯の根面は本来は歯ぐきに覆われているのが普通です。しかし、歯周病により歯周組織の破壊が起こり、炎症が治まった際に歯肉が引き締まることで根面が露出したり、歯ブラシの圧が強すぎたり、あるいは歯のかみ合わせの力により歯ぐきが下がり根面が露出してしまうことなどがあります。
根面はむし歯になりやすい
歯冠部は硬いエナメル質で覆われています。歯根の表面は硬いエナメル質ではなく、それより軟らかいセメント質で覆われており、その中には象牙質があります。象牙質はエナメル質に比べて臨界ph(歯は身体の中で最も硬い組織ですが、酸に弱い性質をもっています。pHが5.5より下がると歯質が溶解を始めます)が高く、溶解しやすく、むし歯の進行が早くなります。
また、根面う蝕は歯を取り囲むように進行するため、治療がしづらく、根の部分から神経までの距離が近いので重症化しやすく発見が遅れると歯が折れたり、抜歯しないといけない可能性もあります。疼痛などの自覚症状がないことが多く、自分で気づきにくくなります。特に高齢者では唾液の分泌が少なくなるため、むし歯になりやすくなります。歯医者さんの定期健診で確認してもらいましょう。
自分でできる根面う蝕の予防
フッ化物の応用には歯科医院でのプロフェッショナルケアと自分で行うセルフケアがあります。今回はセルフケアについて説明します。
ブラッシング
しいブラッシングでしっかりとケアをしましょう。歯ブラシだけでなく歯間ブラシなどの補助的な清掃用具を使用することも大切です。
フッ化物配合歯磨剤
様々な歯磨剤がありますが、根面う蝕の予防にチェックアップルートケア(企業名:ライオン歯科材株式会社)をおすすめします。
歯磨剤などに配合するフッ素濃度は国際基準(ISO)で定められていて、日本では2017年3月に、国際基準と同様にフッ素が1500ppmを上限として配合された歯磨剤の販売が認められました。それまで日本では配合フッ素濃度の上限は1000ppmに規制されていました。
フッ素濃度1500ppm歯磨剤は、1000ppmよりう蝕(むし歯)発生を低減することが報告されています。
チェックアップの歯磨材にはカチオン化セルロースが配合されており、静電作用により、フッ素イオンを歯面に引きつけることで滞留性が向上します。また、チェックアップルートケアは象牙質にもやさしい研磨剤無配合ジェルタイプで、1450ppmのフッ化物、知覚過敏の症状を防ぐ硝酸カリウム、根面う蝕予防ケアのためのピロリドンカルボン酸(PCA)が配合されています。PCAにはう蝕(むし歯)予防となる、象牙質脱灰抑制効果とコラーゲンの分解抑制効果が実験的に認められています。
歯磨剤の洗口量は、約15mlの水で1回(5秒程度)の少量洗口が推奨されています。そのため、低発泡、低香味になっていて少量洗口が可能です。
フッ化物洗口
フッ化物洗口法は、とくに、4歳から14歳までの期間に実施することがう蝕予防対策として最も大きな効果をもたらし報告によれば、う蝕予防効果は約30~80%と言われています。また、成人や高齢者の根面う蝕の予防にも効果があることが示されています。
歯科医師の指導により家庭で行う方法(家庭応用)と、保育園・幼稚園・小中学校などの施設で集団的に実施する方法(集団応用)があります。
分類 |
実施場所 |
実施時間帯 |
フッ化物濃度 |
指導者 |
毎日法 |
家庭 |
就寝直前 |
225,250,450ppm |
かかりつけ歯科医 |
週5回法 |
保育園・幼稚園 |
昼食後または午前中の休み時間 |
225,250,450ppm |
園医 |
週1回法 |
小・中学校 |
午前中の休み時間 |
900ppm |
学校歯科医 |
(表は目安です)
洗口液(ミラノール)の作り方
①粉末タイプの洗口剤1包を専用の溶解瓶に入れます。
②指定の量の水道水(200ml)を入れます。溶かす水は水道水をご利用ください。アルカリ水、ミネラルウォーターは使用しないでください。フッ素の取り込み量は酸性下において高くなることから、溶解液は3前後になるように調整されます。(フッ化物イオンが少なくなってしまいます)
③よく振って溶かします。
溶解後、室温(1~30度)で40日間保存可能です。冷蔵庫の保存が安心です。
洗口方法
①歯をよく磨き汚れを落とします。
②幼児は5ml、小学1,2年生は7ml、それ以上(成人も含め)は10mlを目安にフッ化物洗口液を洗口コップに入れます。
③お口に含みうつむいてブクブクうがいを約30秒間します。前歯、奥歯まで行きわたるようにしましょう。
④液を吐き出します。
就寝前のブラッシング後が最適です。洗口後、30分程度は飲食をさけてください。
今回は根面う蝕のことについて書きましたが、根面う蝕以外の予防を含めて、幼少期から高齢者まで、フッ化物を利用し、う蝕(むし歯)予防に取り組んでほしいと思います。