口腔外科
歯が割れてしまった・・・
虫歯や歯周病で歯として残すのが難しい・・・
など、歯がなくなる原因は様々ですが、実際に歯が無くなってしまうと、どのように治療を行うのでしょうか?
保険治療で考えるならば、入れ歯や、隣の歯をつなげるブリッジ呼ばれる被せ物が主な治療と考えられます。保険外ならばインプラントなども選択肢の一つです。
しかし、適応される条件がいくつかありますが、タイトルにあるように、歯がなくなったところに他の部分の歯を持ってきて、移植する方法もあります。
今回はその移植についてお話します。
移植治療の条件
どのように治療を進めていくかという事ですが、そもそも歯の「移植」なので、移植する歯がないことには治療できません。
どういった歯を移植するのに使用するのかというと、基本的には親知らずや歯茎の下に埋もれている歯(埋伏歯)を使用します。多くは親知らずを使います。
(他の歯を移植に使わないことはないですが、ただし、保険外の治療となってしまいます。)
では、次に移植する歯をどこに移植できるのか?ということになりますが、これも適応される条件の一つとなっていて、基本的には「移植する歯と大きさが似ている歯の部分」になります。術前にレントゲン写真などで、事前にスペースや、歯の根っこの形などを確認しておきます。医院によってはCT撮影なども行うことがあります。
インプラントでは、太さや長さなど、種類が分けられており、前歯から奥歯まであわせることが出来ますが、移植の場合は移植する歯は決まっているので、どうしてもその大きさにあった部分への移植に限られます。
移植できる場所、移植できる歯に目処が立てば、いよいよ移植を行っていきます。
移植治療の方法
移植する方法は2通りあります。
1つ目は、移植する部位の残せない歯を抜く → 移植する歯を抜く → 移植する部位に植えなおすという作業を1日で終わらせてしまう方法です。
2つ目は、以前に歯を抜いた移植する部分に、改めて移植するための穴を作り、移植する歯を抜いてからその穴に植えなおすという方法があります。
以前では1つ目の方法でしか、保険が適応ではありませんでしたが、最近2つ目の方法でも保険適応になりました。
当院では基本的には1つ目の方法で行っていますので、そちらの方法にそってお話します。
治療の手順(寝屋川市在住、女性31歳)
麻酔~抜歯
治療の手順ですが、
まず、局所麻酔を行います。
次に残せない歯からの抜歯になります。もし、歯の周りが痛んでいる場合には、歯を抜いた後に痛んでいる組織をきれいにします。
次に、移植する側の歯を抜歯します。
ただし、この移植する歯を抜く際には十分に注意する必要があります。
歯と骨の間には歯根膜と呼ばれる膜が存在します。 この歯根膜を移植する歯に残したまま、細心の注意をして抜歯します。
この膜があることで、歯と骨の間のクッションとしての機能を果たし、また物を噛んだときの噛みごたえなどの感覚も感じ取る働きをします。
この歯根膜の有無がインプラント治療と、歯の移植の大きな違いとなります。
移植
抜歯が終わればいよいよ、移植になります。
移植する歯を移植する部位に合わせてみて、形があわなければ調整する必要があります。
移植歯の根っこがまず歯を抜いた穴(抜歯窩)に収まらなければ、抜歯窩を整えます。
抜歯窩に移植歯がきちんと収まるようになれば、移植歯に過度な力が加わらないように調整します。
固定
調整が終われば、固定の作業に移ります。
歯を入れただけでは、すぐに抜け落ちてしまいますので、歯の周りの組織が安定するまでは歯を動かないように固定しておく必要があります。
まずは、歯と歯茎を糸で固定します。
ただし、その固定では不十分な場合などは、隣の歯とワイヤーや歯牙用の接着剤などで、歯同士を固定します。
固定が終わればその日の処置は終わりです。
移植後の流れ
移植処置後の治療の流れとしては、
傷口の方が落ち着いてきて、だいたい術後1~2週間ほどで抜糸します。
次の治療として、場合によっては移植した歯の神経の処置を行います。
年齢が若く、移植歯の根っこが未完成の状態であるならば、神経の処置を行わずに経過観察することもありますが、移植歯の根っこが完成している場合には、神経の処置を行う必要があります。
タイミングとは、移植術後2~3週間後ほどになります。
そして、歯の動揺が落ち着きはじめたら、歯の固定をはずします。
だいたい目安は術後1ヶ月になります。
その後、歯の状態に合わせて、歯の被せ物などの治療を行っていきます。
移植についての治療の流れを説明してきましたが、少し特殊な治療になりますので、興味がありましたら、詳しくはお近くの歯医者さんにてお尋ねください。