一般歯科
生活歯髄切断法についてお話します。
生活歯髄切断法という言葉を聞いたことありますか?
通常、虫歯などが原因で何もしなくてもズキズキ痛む、温かいものを食べるとしみて冷たいものを食べるとマシになるなどの痛みが出た場合に歯の神経(歯髄)をとる処置を行います。
しかし、症状の度合いによっては根っこの先まで神経をとらず、歯の上の方の神経だけをとり、根っこの先の神経は残す治療があります。それが生活歯髄切断法です。
基本的には痛みが出るということは、それだけ虫歯が進行しているということです。神経まで到達してしまう前に痛みがあるのならば歯医者に行くようにしてください。
生活歯髄切断法の適応
① 歯髄の疾患が歯冠部だけに限局している場合
② 虫歯をとっている最中に起こった偶発的な露髄(神経と虫歯の距離が近く、神経まで到達してしまうこと)
③ 露髄面が大きい場合
④ 歯根が未完成で歯冠部に限局しているもの
⑤ 歯の破折などで露髄部が大きい場合
生活歯髄切断法が適応ではない
① 歯根部まで細菌感染が起こっている場合(ロキソニンなど鎮痛剤が効かない程の痛みがある、歯をコンコンと叩いて響くような痛みがある、睡眠をとろうと寝転んだ時にドクドクするような痛みがある場合はほぼ細菌の感染や炎症が歯根部の歯髄まで及んでいます。)
生活歯髄切断法の利点と欠点、方法
基本的には若年者の永久歯や乳歯に行われる事が多いです。
なぜかというと、若年者の永久歯や乳歯の歯髄というのは血液供給が豊富であり、組織の再生する能力も大人に比べて高いという理由からです。生活歯髄切断法を行うと、根部だけでも神経が残っているという状態になります。血液供給が豊富であるので残った歯髄をより元気な状態に保て、歯の寿命を延ばすことにもつながります。神経を全てとってしまった歯はどうしてももろくなりやすく、割れてしまったりしやすいです。また乳歯は永久歯に生え変わるまでの間ではありますが、きちんとした生え変わりの時期まで口腔内に残存しないと将来、全て永久歯になったときの歯並びに影響したりもします。
欠点としては、根部の歯髄は残っていますので、治療してから数年~数十年経った後に神経の炎症が起きてしまう可能性があるということです。その際はもう一度その歯の再治療を行い、根部に残しておいた神経もとっていく治療が必要になります。神経をとる治療になりますので最終的にはかぶせを作らないといけなくなります。又、年齢とともに歯の神経の管は少しずつ細くなっていきますので、いざ再治療となると根部の神経の管が見つかりにくいという欠点もあります。
生活歯髄切断法の方法
①まず麻酔から行います。ほとんどの場合浸潤麻酔で効きます。浸潤麻酔をする前に表面麻酔を行い刺入点の部分の粘膜を麻痺させてから行うと小児の場合はいいかもしれません。
② 虫歯の除去。スプーンエキスカやラウンドバーで取り除いていきます。
③ 髄室、根管開口部の歯髄の除去。(鋭利なラウンドバーを使用することで根管口部のところでキレイに歯髄の除去ができます。)
④ 交互洗浄を行った後、水洗、乾燥を行います。
⑤ 血が止まりにくいときがあります。その場合はビタペックス(水酸化カルシウム製剤)を用いて仮にふたをします
⑥ 止血が確認できたら仮のビタペックスを取り除き、新たにビタペックスあるいは他の水酸化カルシウム製剤を貼付します。
⑦ 硬いセメントを用いて2重に充填します。
⑧ その際かみ合わせは低く設定します。なぜかというと、かみ合うように調整してしまうと食事などで噛む刺激によって、神経を刺激してしまい痛みなどの症状が出やすくなってしまうからです。
⑨ 最後にレントゲンで確認します。(お薬が綺麗にうまっているかどうかの確認)
⑩ そして投薬をする場合もあります。上の部分とはいえ、神経を触って治療をしていますので、最初2、3日は痛みが出ることがあるからです。その時は無理せずに痛み止めを飲むようにしてください。