一般歯科


お子さんの歯(乳歯)が早く抜けたら要注意!

今回は低ホスファターゼ症という病気についてです。

低ホスファターゼ症とは、骨の石灰などに必要なアルカリホスファターゼ(ALP)という酵素が

体内で正常につくれなかったり、少なかったりするために起こる遺伝性の難病で、全身に代謝障害を起こし、QOL(生活の質)を非常に低下させてしまいます。

ALPは健康診断等の血液検査でも調べられています。成人の場合、一般に数値は80~350位(乳児期、成長期は成人の3~4倍)ですが、この病気では、ALPの値が非常に低くなります。

とてもまれな病気で、発症割合は10万人に1人くらいと思われます。

骨や歯を中心に、全身にさまざまな症状があらわれます。症状があらわれる年齢や症状の種類、症状の程度は一人ひとり違います。

低ホスファターゼ症の一般的な病型分類

周産期型→お腹の中にいる時、生まれたときにみつかる
乳児型→出生後6ヶ月までに症状が出る
小児型→出生後6ヶ月以上18歳までに症状が出る
成人型→18歳以上に症状がでる
歯限局型→歯に症状が出る(あらゆる年齢に発症)

低フォスファターゼ症の主な症状

・乳歯の早期脱落
・骨格系障害(骨が弱い、ほねがくる病様に変化する、骨折しやすく治りが遅い、脚が曲がって変形する、骨痛があるら頭蓋骨早期癒合症)
・筋肉、関節症状(筋力が低下する、筋肉痛や関節痛、関節炎、歩くために松葉杖や歩行器、車いすなどの補助が必要)
・呼吸器障害(肺の働きが悪くなる、肺炎を起こしやすくなったり、症状がひどくなった場合は人工呼吸器が必要になることもある)
・神経系障害(けいれん発作を起こす)
・腎障害(腎石灰化、高カルシウム血症、高カルシウム尿症)

この症状のうち、乳歯の早期脱落の具体的な特徴について説明します。

乳歯の早期脱落

乳歯の早期脱落は1歳〜4歳までによくみられる
通常、乳前歯は1歳頃までに萌出してきて、6〜8歳頃に永久歯に生え変わります。

★乳前歯の脱落がもっとも多い
下顎の乳前歯が最初に脱落するケースが多く、次に上顎の乳前歯が多くなります。重篤な場合には乳臼歯や、永久歯に及ぶこともあります。

★痛みなどの症状は少なく、歯の根っと一緒に抜ける
本来なら、歯の根っこは吸収され、歯冠のみが抜けます。しかし低ホスファターゼ症では歯ぐきに埋まっている歯の根っこの部分と一緒に抜けます。この時痛みや炎症の症状はほとんどありません。

 

おわりに

発症時期が早いほど重症で命に関わることがあります。発症する年齢はさまざまで、成人型を除く多くの場合、特有の歯科症状である「乳歯の早期脱落」を起こします。早期に治療を開始し症状を改善させるためきは、乳歯の早期脱落は大きな手がかりとなります。

低ホスファターゼ症は長年効果的な治療法や治療薬もなく、何人も幼い子の命が奪われましたが、2015年に初めての治療薬が発売され幼い子の命が助かるようになってきました。

4歳以下で乳歯が抜けた、足の曲がりが気になる、歩き方が上手でない(ハイハイや立ち上がり、歩きはじめが遅い)、よく転ぶ、このような症状があれば要注意です。

すこしでも異常を感じた場合は歯医者や病院で相談しましょう。またエックス線写真検査などを行うことも大切になります。