一般歯科


 以前に歯の根っこの形などをお話しましたが、歯は奥歯になると1つの頭に対して複数本根っこを持っています。そして、その歯の根っこの分かれ目、股にあたる部分を分岐部と呼びます。

 歯周病が進行していくと、歯の周りの歯茎に炎症が起こり、徐々に歯の周囲の歯茎が下がり、骨が溶けていってしまいます。

これが、奥歯で起こった場合、歯茎が下がり、骨が溶けていくところは同じですが、炎症の起こる方向が、歯の根元方向に進んでいくだけでなく、先ほど話した「根分岐部」に差し掛かると歯の分かれ目の内部に進んでいってしまいます。

このように根分岐部に歯周病が進行している状態を根分岐部病変といいます。

今回はこの根分岐部病変について少しお話します。

 

 

 

 

根分岐部病変の分類

通常のポケット測定では、プローブを使って歯と歯茎の隙間の縦の深さを測りますが、この根分岐部では、奥行きつまり、横の深さも測ります。

その奥行きの深さによって、根分岐部病変の分類を行います。

ちなみにポケットの測る部位ですが、下の奥歯は前後に1本ずつ根があるため、歯の頬側と舌側の2箇所を検査しますが、上の奥歯は頬側に2本、反対側に1本あるので、それぞれの股の部分、合計3箇所で検査します。

根分岐部病変はその進行度による状態によって次のように主に分類されます。

Glickmanの分類 
 
1級: 根分岐部に初期の病変があるが、X線写真上では歯槽骨には病変は無い
2級: 根分岐部の歯槽骨が一部吸収されているが、プローブは貫通しない
3級: 根分岐部の歯槽骨が吸収され、プローブが貫通するが、歯肉に覆われている
4級: 根分岐部が完全に露出し、プローブが貫通している

LindheとNymanの分類 


1度 : 根分岐部にプローブ(探針)が挿入できるが、歯の幅の1/3以内まで
2度 : 根分岐部にプローブ(探針)が1/3以上挿入できるが、貫通はしない
3度 : 根分岐部にプローブ(探針)を挿入すると、プローブが貫通する
 

この分類などを考慮して、治療方針を決めていきます。
  

根分岐部病変への外科的処置

先ほどの分類での1度に当たる場合は基本的には、スケーリングなどの非外科的処置で治療を行っていきますが、分類が2~3度となっていくと、外科的処置の適応になっていきます。

ここではその代表的な外科処置をお伝えします。

 

 

 

ルートセパレーション

一つ目は、ルートセパレーションと呼ばれる方法です。

基本的には下顎第一大臼歯に適応されます。

簡単に言ってしまうと、根分岐部で、歯を縦に分割してしまい、1本の大臼歯を2本の小臼歯のような形にしてしまおうという考え方です。

しかし、ただ単に割ればいいということではなく、まず行うには歯そのものの準備が必要です。そのまま割ろうとすると、歯の神経に当たってしまうため、歯の神経の処置を行ってからの分割になります。

そして歯を分割しますが、分割によって、歯の股の部分の「トンネル」は解消されますが、そもそも、骨が吸収され、出来てしまった「トンネル」なので、股の部分周囲の骨が垂直的に下がっているのがほとんどです。

 大きく骨が下がってしまっている場合などには、その周りの骨を移行的に整える必要がある場合もあります。

周囲歯肉が治まってきたら、被せ物の治療を行います。

へミセクション

2つ目はへミセクションという方法です。

これは、根分岐部だけでなく、一方の根の先付近まで、骨吸収が起こっていたり、根の先で膿袋を形成して、状態が悪くなってしまった場合、歯を分割した後、悪い根っこを抜歯してしまう方法です。

下顎の歯は2本根っこがあるので、どちらかの根っこを抜きますが、上顎の歯の場合は3本ありますので、状態によって1~2本抜くことがあります。

こちらも抜く前に歯の神経の処置が必要です。

残した根っこは、歯の周囲組織の状態があまりよくないケースが多いので、基本的にはブリッジと呼ばれる他の歯と連結させた被せもので修復することが多いです。

 

他の外科的処置として、歯の頭の部分は残して、状態の悪い根っこの部分だけを切断して抜去する、「ルートリセクション」と呼ばれる方法もあります。

まとめ

今回は、根分岐部病変に対する代表的な外科処置をお伝えしました。

悪くなりすぎると、歯そのものを抜歯する必要性も出てきますが、状態によっては今回ご紹介した外科的処置以外にもスケーリングなどの非外科的処置や、再生療法などの治療も適応になるケースがありますので、遅くなる前に歯科医院での定期健診をおススメします。