予防歯科治療・ドライマウス
体に栄養を取るためには、お口から物を食べないといけませんよね。
おいしく食べるためには歯が大切です。
でも、歯だけが健康で丈夫でも実は食べることって出来ないんです。
物を噛む(すりつぶす)という行為は歯、唇、舌、頬、口蓋が上手く連動して行われます。
これらのうちひとつでも障害があると上手く、物を噛んだりすりつぶしたりすることは出来ません。
食べるという行為は、口から物を摂取し、物をすりつぶし、飲み込みやすい塊にして、のみこむという一連の行為です。
この行為を高齢になっても上手く行うためには、お口の周りの「機能」が衰えないようにしなければなりません。
口腔ケアという言葉をご存知でしょうか?
口腔ケアとは、お口の中の環境を整えることで、お口の中から全身的な健康を保つことが目的とされています。
口腔ケアにも、お口の中を清掃し、清潔な状態を保つ「器質的口腔ケア」と、お口の周りの筋肉をリハビリし、お口の機能の回復、向上を目的とした「機能的口腔ケア」があります。
今回はこの「機能的口腔ケア」の方法についてお伝えします。
1つ目、「ぶくぶくうがい」です。
実はぶくぶくうがいをするだけでも「機能的口腔ケア」に繋がるのです。
いつものうがいよりも少ない水を用意して頂き、水が口から飛び出したりこぼれたりしないように行いましょう。
(口を閉じることが難しい方、むせやすい方は、水を含まず行いましょう)
1.両ほほをしっかり膨らませて「ぶくぶく」を10秒動かしましょう
2.右ほほだけで「ぶくぶく」を10秒間
3.左ほほだけで「ぶくぶく」を10秒間
4.もう一度両ほほでいきおいよく「ぶくぶくぶく」と10秒間
5.(出来る方は上唇を膨らませて「ぶくぶく」、次に下唇を膨らませて「ぶくぶく」とそれぞれ10秒ずつ行いましょう)
6.最後は残っている水をまとめて「ぷっ!」と吐き出しましょう。
「ぶくぶくうがい」によって頬の筋肉、口の周りの筋肉、が鍛えられます。
お口の中では、舌が動くので舌の筋肉が鍛えられます。
同時にお口の中の汚れを取り除くことが出来ます。
2つ目は、「あいうべ体操」です。
あいうべ体操は、「あ」、「い」、「う」、「べ」の口の形をしたり、発音することで、口の周りや、舌の筋肉のトレーニングになり、唾液も出やすくなります。
1.「あー」と大きな口をあけます。そのときに声を出してもいいです。
2.「いー」と口を横に大きく広げます。
3.「うー」と唇を前にしっかり突き出しましょう。
4.「べー」と舌をしっかりと舌に伸ばします。そのときにあご先まで伸ばすイメージで行いましょう。
「あー」から「べー」までそれぞれ1秒ずつ行い、これを1セットとして5セット行いましょう。
「あ」「い」「う」の体操で動かす筋肉を鍛えることで、「飲み込み」や「食べこぼしの防止」の向上につながります。
「べ」は舌筋のトレーニングです。「飲み込むための口の中での食塊形成」や「飲み込み」の向上につながります。
3つ目は、「ぱぴぷぺぽ体操」です。
1.『ぱ』 目と口に力を入れて閉じてから、目と口を大きくあけて「ぱっ!」と声を出します。
2.『ぴ』 ほほに力をいれて、奥歯でかみ締めながら、「ぴぃー」と声をだします。
3.『ぷ』 口元から息が漏れないように唇に力を入れて両ほほを膨らませます。
4.『ぺ』 舌を思いっきり前に出して、上にあげながら引っ込めます。
5.(アイスクリームをペロンをなめるイメージ)
6.『ポ』 唇をすぼめ「ぽー」と長く声を出します。
これをゆっくり5回繰り返します。
「ぱ」はお顔全体の表情筋、「ぴ」はお口を横に引っ張る頬筋、「ぷ」では口の周りの口輪筋、「ぺ」舌の筋肉、「ぽ」口輪筋と頬筋のトレーニングになります。
4つ目は「パタカラ体操」です。
パタカラ体操は、パ、タ、カ、ラの発音をすることで、お口周りの舌の筋肉のトレーニングになります。また、唾液を出やすくする効果もあります。
1.『ぱ』は唇をしっかり閉じてから発音します。
2.『た』は舌を上あごにくっつけて発音します。
3.『カ』はのどの奥をとじて発音します。
4.『ラ』は舌を丸めて舌の先を上あごの前歯の裏につけて発音します。
10回ずつ発音し、5回繰りかえして行いましょう。
「パ」は「食べこぼしの防止」、「タ」と「ラ」は食べ物を喉まで動かすトレーニング、「カ」は喉の奥を閉じるトレーニングになります。
あいうべ体操が少ししんどい方は、こちらを試してみてください。
5つ目は嚥下体操です。
嚥下体操はいろいろなトレーニングを組み合わせたもので、お口周りや舌の筋肉のトレーニング、唾液を出やすくする効果があります。
1.口をすぼめて深呼吸します。
2.首をまわして方の上下運動をします。
3.両手を頭上に組んで上半身を左右にたおします。
4.ほほを膨らませたり引っ込めたりします。
5.舌を前後に出し入れします。 舌で左右の口角をなめてみましょう。
6.強く息を吸い込みます。そしてパ、タ、カと5回発音します。
7.最後にもう一度口をすぼめて深呼吸します。
6つ目はシルベスター法です。
「飲み込み」と「呼吸」には深い関係があります。呼吸機能が低下すると咳が出にくくなり、また呼吸が浅くなると、呼吸回数が増え、飲み込むタイミングが取りづらくなり、誤嚥を起こしやすくなります。
そのため、シルベスター法を行って呼吸機能を高めることは、誤嚥性肺炎を予防することに繋がります。
1.肘から上の部分をもちます。
2.ゆっくりとはなで息を吸いながら両腕をあげます。
(バンザイするように)
1.ゆっくりと口で息を吐きながら両腕を下ろします。
息を吸うときに両腕を上げて、息を吐くときに両腕を下げるようにします。
腕は痛くない範囲で動かしましょう。腕が持ちにくい場合は手首などを持って行ってください。
5~10回繰り返します。
今回は機能的口腔ケアの方法についてお伝えしました。
この他にも方法はありますので、また後日お伝えしていきます。
注)画像は(一社)大阪府歯科医師会 「新しい口腔保険指導ガイドブック」より引用