矯正歯科


出生後から幼児期~少年~青年・・・へと身体はその時に応じて成長していきますが、その成長・発達には身体の部位によって異なることをご存知でしょうか? 今回はその発達のしかたについて書いてみようと思います。 まず、身体の成長・発育には各々の部位で、一定の法則があります。 その発育の過程を表した代表的なグラフが「Scammonの発育曲線」になります。 このグラフは、身体の組織を4つの型(一般型、神経系型、性器型、リンパ型)に分類し、20歳時点での発達度を100%とした時の各年齢での発達度をみることが出来ます。      

Scammonの発育曲線

では、具体的にScammonの発育曲線におけるそれぞれの型についてみていきましょう。

・一般型・・・この型には、筋肉、骨(一部除く)、身長、体重などが含まれます。

       出生後すぐからと、12歳頃の思春期からの2箇所で著名な発達が見られ、6~10歳頃は発達が緩やかになっています。

     結果、S字のような曲線となり、このような曲線を、シグモイド曲線と呼ばれています。

 

・神経系型・・・この型には、能や脊椎などの神経系が含まれています。

 この型の発育の特徴として、出生後より急激な発育がおこり、6歳頃までには90%くらいの発育に達します。

6歳以降は20歳まで徐々に発育していきます。

ちなみに、先ほど、骨はほとんどが一般型と話しましたが、能を囲っている頭蓋骨、頭蓋底もこの発育型に含まれます。 能の影響が大きいと考えられます。

 また、脳に近い上顎骨(上の歯が生える部位の骨)は先ほどの一般型と神経型の中間の発育がみられます。

 

 

・性器型・・・この型には睾丸・卵巣などの生殖器関係が含まれます。

 この型の発育の特徴として、出生後より、12歳ごろまではゆるやかな成長で、だいたい10%程度までしか発達しませんが、12歳(思春期)ごろを境に急激な成長がおこります。

 

・リンパ型・・・この型には胸腺やリンパ線などのリンパ組織が含まれています。

この型の発達の特徴として、出生後より神経型と同じような発達を見せますが、7歳ごろに大人と同じ100%の発達になりそれからも12歳ごろまで、発育し続けます。

思春期である12歳ごろにピーク(約180%)となり、その後徐々に退縮し、20歳ごろに再び100%に達します。

歯科の分野で何が関係してくるのかというと、小児・矯正歯科です。

骨格(一般型)、下顎骨(一般型)、上顎骨(一般型と神経型の中間)の成長を見せるので、今どれだけ成長しているのかなど、おおよその発育の段階などを予想することができます。

 

 

上顎・下顎の成長

では、それぞれの骨はどのように成長するのでしょうか?

上顎、下顎それぞれの部分においてみていきましょう。

 

<上顎>

上顎はそもそも骨で考えると、一対の上顎骨と、口蓋骨(口の中の天井の部分)とそれにくっついた突起(歯槽突起、口蓋突起、頬骨突起、前頭突起)などから出来ています。

 成長過程としては、・歯槽突起(上顎の歯が植わっている部分)の発育、・縫合部の発育、・上顎結節部の添加性の発育、などで成長していきます。

ここで、縫合部という言葉が出てきましたが、縫合部とは、簡単に言えば骨と骨がくっついている境目のことを指します。

 顔面を形成している骨は数種類あり、上顎にある縫合部としては、

・前頭上顎縫合 ・頬骨上顎縫合 ・頬骨側頭縫合 ・翼突口蓋縫合

の4つあります。

 この縫合部の添加性の発育によって全体としては前下方に移動していきます。

ただし、単純に前下方に移動しているわけではなく、部位によっては骨の吸収なども起こり、複雑に成長します。

 

<下顎>

下顎骨を大きく部分わけしてみてみてみます。

 (下顎頭)

顎関節を形成している関節突起と呼ばれる出っ張りの頭の部分です。

この下顎頭は軟骨性及び添加性の成長によって後上方に移動します。

 (筋突起)

関節突起の前方に位置し、側頭筋が停止する出っ張りです。

この突起は舌側の骨の添加と、外側の骨の吸収によって、舌側方向に移動していきます。

 (下顎枝)

これは、関節突起と筋突起を除いた下顎骨の上方の部分です。(だいたいエラあたりまで)

この下顎枝をさらに上部と下部に分けます。

上部では内側が添加性で、外側が吸収性により、上内方に移動します。

下部では外側が添加性、内側が吸収性のため、上部と逆の成長を見せます。

 (下顎体)

下顎枝より前方の厚みのある骨の部分です。

この下顎体は、長くそして厚み、幅が出来ていきます。

 

ざっと、大まかに説明しましたが、これら以外にも細かな成長過程があって、全体としての骨の成長になります。