予防歯科・ドライマウス


自分自身が行なうセルフケアに占める時間は歯科医院でのプロフェッショナルケアより圧倒的に多いです。

毎日のセルフケアで多くの方が歯磨剤を使用しているかと思います。それぞれの目的に合った歯磨剤を選ぶことでその有効成分が活かされます。清掃力は歯ブラシの種類による清掃力だけではなく、歯磨剤による清掃力との組み合わせにより決まります。

 

歯ブラシ類による清掃力

歯ブラシを使ってプラークを除去する時はこする作用、ブラッシングの圧により変化が出ます。この時に使用する歯ブラシの形状、ヘッドの大きさ、毛の硬さ、植毛の状態などが影響され、そしてプラーク除去したい部分に毛を的確にあてられるか、ブラッシングのテクニックや時間や頻度などが清掃力を決めることになります。

 

歯磨剤類による清掃力

歯磨剤には研磨剤、浸透剤や清掃助剤といった化学的成分が配合されているものがあります。研磨剤はかきとる作用であり、その種類や硬さ、大きさ、形状、配合量などによって変化します。歯科流通の歯磨剤の多くは低研磨や研磨剤無配合、低発泡、発泡剤無配合の製品が主流となってきています。しかし患者さんのお口の中の状態によりある程度の研磨力や発泡剤の手助けを借りたほうが清掃力が上がる場合があります。ブラッシング圧の強い方は研磨剤無配合のものを選ぶことで歯面への影響を抑えることができます。

 

歯磨剤の有効成分

歯磨剤の有効成分を5つに大きく分けていきます。

脱灰を改善したい→フッ化物イオンによる再石灰化

脱灰とは口の中の酸が歯のエナメル質(歯の一番表面の組織)の内側からカルシウムやリン酸などを溶け出すことをいいます。初期う蝕、二次う蝕、根面う蝕など、むし歯のリスクが高いケースにはフッ化物配合の歯磨剤に加え、ジェルや洗口液などの併用をすることが望ましいです。

★NaF フッ化ナトリウム

・最表層を再石灰化

・耐酸性を向上させる

・反応は急速

★MFP モノフルオロリン酸ナトリウム

・表層下の脱灰最深部の再石灰化

・反応はゆっくり

★SnF2 フッ化第一スズ

・スズイオンによる殺菌効果がある

・歯面に着色する場合がある

歯石・ステインを除去したい→浸透力による沈着抑制

浸透力により歯石やステインが付きにくく、剥がれやすくするような対処します。汚れを浮かせる作用を用います。

★ピロリンサンドイッチナトリウム

・歯石、ステインに浸透する

・歯面のカルシウムと結合する

★ポリリン酸ナトリウム

・歯石、ステインに浸透する

・歯面のカルシウムと結合する

★PEG ポリエチレングリコール、マクロゴール

・ステインに浸透し沈着を抑制する

★PVP ポリビニルピロドリン

・ステインに浸透し沈着を抑制する

これらの成分はタバコのヤニ除去としても承認されています。PEGやPVPは高い浸透性から清掃力が不足している症例にも応用できます。

細菌をへらしたい→浮遊性菌、バイオフィルムの殺菌

細菌は炎症が起こって増えている時の歯周ポケット内などの浮遊性菌を対象とするのか、炎症はなく症状が安定しているときのバイオフィルム構成菌を対象とするのかなどを考え殺菌剤を選択します。

★IPMP イソプロピルメチルフェノール

・バイオフィルムに浸透殺菌

・安全性が高く、刺激性・毒性が低い

★CPC 塩化セチルピリジニウム

・低濃度で浮遊性菌に殺菌効果

・安全性が高い

★CHX グルコン酸、塩酸クロルヘキシジン

・浮遊性菌の抑制

・濃度、使用法に注意が必要

★LSS ラウロイルサルコシンナトリウム

・口臭、う蝕予防に有効

・陰イオン性の界面活性剤で殺菌作用がある

炎症を抑えたい→軟組織の消失、血行促進

抗炎症剤は上に書いた殺菌剤と一緒に配合されていることがほとんどです。

★e-ACA イプシロンアミノカプロン酸

・抗プラスミン作用(血栓を溶かしたり炎症を誘発する酵素プラスミンのはたらきを抑えたりする作用)がある

・炎症の誘発を抑制する

★グリチルリチン酸

・抗炎症作用がある

★TXA トラネキサム酸

・抗プラスミン作用がある

・出血を抑制する

★酢酸トコフェロール ビタミンE

・血行促進作用がある

歯質を回復したい→エナメル質、露出根面の結晶修復

結晶修復は、ハイドロキシアパタイトの構成成分となるミネラル、カルシウム成分を補給し、根面う蝕や知覚過敏は象牙細管を封鎖することで抑制効果がはたらきます。エナメル質、象牙質のほとんどがハイドロキシアパタイトからできており、リン酸カルシウムでできた歯や骨を構成する成分です。

★mHAP 薬用ハイドロキシアパタイト(ナノ粒子ハイドロキシアパタイト)

・歯の結晶成分を補給する

・エナメル結晶が間隙に入り込む

★CPP-ACP

・非結晶リン酸カルシウム

・ミネラルを供給する

・中和・緩衝作用がある

★f TCP リン酸三カルシウム

・フッ化物こ再石灰化を向上させる

・象牙細管を封鎖する

・根面う蝕を予防する

・リン酸、カルシウムの結晶体

★nano HAP ナノ粒子ハイドロキシアパタイト

・象牙細管を封鎖する

・乳酸アルミニウム

・知覚過敏、根面う蝕を抑制する

・象牙細管を封鎖する

★硝酸カリウム

・知覚過敏を抑制する

・刺激の伝達をブロックする

・象牙細管の封鎖はしない

 

知覚過敏のある方は歯ブラシの毛の硬さにも考慮し歯面へのダメージを抑えるようにしましょう。

 

まとめ

歯磨剤には色々な有効成分があります。歯磨剤の成分はパッケージの裏面に記載してあるので目を向けて見てください。

歯磨剤にどんな清掃力を求めるかは個人の清掃力により異なります。患者さんの口腔内の状態、状況をチェックし、目的に合わせた歯磨剤を選択したり歯ブラシ類の見直しを行います。セルフケアで使用する歯磨剤を適切な清掃力と有効成分でよりよいお口の中をつくりましょう。また歯科医院で定期的にプロフェッショナルケアを受けることが大切です。