歯周病治療


歯周病は全身疾患にも悪影響を及ぼす疾患です。

その中のひとつが糖尿病であり、「歯周病が第6番目の糖尿病合併症」であると言われています。

糖尿病はこの半世紀で患者数は40倍以上に激増し、糖尿病とその予備軍は4000万人に達することが明らかになりました。(九州大学が実施している世界的疫学調査結果から類推)

また歯周病にかかっている人は日本人成人の約8割と発表されました。(平成28年歯科疾患実態調査・厚生労働省)どちらも日本の国民病といえます。

 

今回は歯周病と糖尿病の関係について説明します。

糖尿病とは

糖尿病とはインスリンの作用が十分でないためブドウ糖が有効に使われずに、血糖値が高くなり、その状態が持続していることです。

すなわち、高血糖状態が慢性的に続くことといえます。

インスリンは膵臓の中にある膵島(ランゲルハンス島)で作り出されるホルモンで、血液中のブドウ糖を筋肉や肝臓などへ取り込みエネルギーとして利用するのを助ける働きをしています。

血糖値を上げるホルモンはグルカゴン、アドレナリン、ステロイド、成長ホルモンなどたくさんの種類が存在しますが、血糖値を下げるホルモンはインスリンのただひとつしかありません。

糖尿病は、このインスリンの作用が十分でないためブドウ糖が有効に使われずに、血糖値が高くなっている状態のことです。放置すると全身にさまざまな影響が出てきます。

 

糖尿病が歯周病に及ぼす影響

高血糖状態が続くと

・体の抵抗力が落ちる

・感染しやすくなる(歯周病も感染症のひとつです)

・マクロファージの機能低下(マクロファージとは体内に侵入してきたばい菌や制御不能になった細胞を取り込んで消化し、身体の健康を保つ働きをする細胞です)

・血液循環の不良

・傷が治りにくい

・ドライマウス(口の中が乾燥すると、唾液の持っている自浄作用が失われ、通常よりも細菌が繁殖しやすくなります)

などさまざまなトラブルが発生します。

その結果、糖尿病があると歯周病原因菌に、より感染しやすくなり、糖尿病の人は糖尿病でない人に比べ、歯周病が重症化しやすい傾向にあり、進行も早いと言われています。

なので歯周病の治療が、糖尿病の改善に大きく関わっていることが分かります。

歯周病が糖尿病に及ぼす影響

歯周病は歯茎、歯根膜、歯槽骨などの歯周組織に細菌が感染し、炎症を引き起こす生活習慣病です。

炎症が起こると多くの炎症性サイトカインが分泌され、歯周組織の破壊を引き起こします。

歯周病の方の歯茎は出血が起きやすく、菌や炎症性サイトカインなどが血流に乗って全身に広がってしまいます。

 

炎症性サイトカインはカラダの中の炎症反応を促進する働きを持っており、これが多く分泌されると、血糖値を下げるインスリンの働きが悪くなり、高血糖状態に陥り、糖尿病が悪化してしまいます。

 

また、最近の研究によると2型糖尿病は脂質を過剰に溜め込み、その脂肪細胞が慢性的な脂肪組織の炎症を引き起こしていることが原因のひとつであると考えられています。歯周病は細菌感染症による歯周組織の炎症であり、どちらにも慢性的に続く微炎症が存在しています。この慢性的に続く微炎症を背景として、インスリンの働きを悪くしています。

歯周病治療で血糖値が下がる

歯周病の治療をすると血糖コントロールが改善するという研究成果も数多く報告されています。歯周病の治療を行うことにより、歯肉の炎症が抑えられ、インスリンの働きを阻害する炎症性サイトカインの生産が減少します。それによりインスリン抵抗性が改善されて血糖値、HbA1cの値が下がるということが日本での研究を含めた多くの臨床研究で報告されています。

 

歯周病の検査は歯周ポケットの深さ、歯ぐきからの出血、歯の動揺度などを調べます。(エックス線で写真を撮影し、歯を支えている歯槽骨の状態も確認します)

治療ではプロッフェショナルケアとセルフケアがあります。

歯医者さんでのプロフェッショナルケアは、歯垢・歯石の除去やルートプレーニングなどを行ないます。

セルフケアでは毎日の正しいブラッシングを行い、プラークコントロールを行う事が大切です。

歯医者さんで歯みがき指導など口腔衛生指導をお受けください。

 

また、入れ歯が合わない、揺れている歯があり痛む、奥歯がないなどの原因でしっかり咀嚼ができないと、柔らかく食べやすいものに偏りがちになり栄養をしっかり摂ることができなくなることがあります。重度の糖尿病や歯周病の人で味覚障害があるときは濃い味のものを好み、偏食になりがちです。糖尿病の栄養指導は、栄養素の入ったバランスの良い適正なエネルギー量で摂取することが目標とされています。食生活を改善するために、お口の機能が障害されている場合は歯医者さんで診てもらいましょう。

まとめ

歯周病と糖尿病は互いに関係しています。それぞれを治療することでお互いに症状の改善ができます。歯周病も糖尿病と同じように生活習慣で発症する場合が多いです。歯周病を治療することで、全身への健康維持につながります。