口腔外科


以前に「歯が割れてしまったときの治療」についてお話しました。

ボールがぶつかったり、転んで歯をぶつけてしまったり、、、

割れてしまった場合には以前話した通りなんですが、割れる以外にも、歯が飛び出てしまったり、歯茎の中に埋もれてしまったりすることもあります。

今回はそのような「脱臼」と呼ばれる状態についてお話しましょう。

「脱臼」は損傷の状態や程度によって分類されています。

 

震盪・亜脱臼

1.震とう

震盪とは、歯の揺れや移動とかはないが、歯の周りの組織に外傷が加わって、歯茎に内出血などは見られる状態です。

この震盪の場合には、基本的には経過観察を行います。

2.亜脱臼

亜脱臼とは、歯周組織への外傷で歯の移動はないが、明らかに動揺を伴い、歯根膜の一部に断裂がある状態です。

歯根膜とは、歯と植わっている骨の間に存在する膜で、様々な役割を持っています。

この亜脱臼の場合は、食事などで痛みが出る場合などにはかみ合わせの調整や、しばらく固定を行い、経過観察します。

 

側方脱臼・挺出

3.側方脱臼

側方脱臼とは、定義としては歯の歯軸方向以外への転位とされていますが、簡単に説明すると、もともと植わっていた骨の位置からずれてしまう状態です。

治療としては、永久歯(大人の歯)できるだけ早く、ゆっくりと弱い力で元の状態に整復し、固定します。 安静にした状態で、経過観察を行います。乳歯(子供の歯)は、外傷が重度でない場合や、永久歯への交換期が近くない場合には、整復固定を行います。

4.挺出

挺出とは、もとの歯が骨に植わっている位置より飛び出た状態になることです。

治療としては、永久歯はできるだけ早く、ゆっくりと弱い力で元の状態に整復し、固定します。 安静にした状態で、経過観察を行います。

乳歯は、外傷が重度でない場合や、永久歯への交換期が近くない場合には、整復固定を行います。

 

 

 

陥入・完全脱臼

5.陥入

陥入とは、歯が植わっている骨の中に、外傷などによって更に埋まってしまう状態です。

治療としては、乳歯(子供の歯)や根っこのまだ完成していない永久歯の場合は自然に再び生えてくることを期待し、そのまま経過観察を行います。

根っこの完成した永久歯の場合は、正しい位置に整復した後に、約6週間ほど固定します。加えて、固定後、10日以降に予防的な根管治療を行います。

 

6.完全脱臼(脱落)

完全脱臼とは、簡単に言うと抜け落ちてしまっている状態です。

治療としては、基本的には再植が適応になります。

ただし、全身状態が不良の場合や、また抜け落ちた歯、もしくは歯の植わっていた支持組織に感染がある場合など、再植ができないケースもあります。

また、乳歯の場合にも、再植する事で、永久歯に影響が出る可能性がある場合には再植は行いません。

(歯が抜け落ちた場合、抜け落ちてからの状況や時間が、再植後の予後に大きく影響を与えます。

もし抜け落ちてしまったら、歯の乾燥を防ぐために、・抜けた歯を牛乳につける。・市販の歯の保存液につける。・生理食塩水につけるなどの対策をしていただくことが望ましいです。)

再植後、整復し、10~14日間固定を行います。

根っこの完成している永久歯は再植後、約10日後に予防的根管治療を行います。

 

まとめ

 以上の状態に共通しているのは、処置後もしばらくは定期的な経過観察が必要であるということ。

歯に外傷が加わった際に、歯の歯髄に影響が出る可能性があるため、歯の固定後、歯の歯髄に症状(歯の色が変色するなど)が見られる場合には、根管治療が必要になるということです。

いずれにしても早い処置が予後にもつながりますので、もしものときにはお近くの歯科医院を受診してください。